| ■相続とは? |
相続(Inheritance)は、日本国においては、主に死亡した人の財産承継を意味するものです。
現金や預金だけでなく、土地や家屋など不動産、車両、絵画などの動産などがその対象となります。
仏壇など祭祀財産は相続財産に含まれませんが、「お墓の土地利用権」は相続対象となります。
人々を悩ます「相続」を円滑にすすめる為に、遺言の制度が民法上に定められ、また相続税は贈与と比べて有利な税率とされているのです。 |
| ■遺産分割の難しさ〜なぜトラブルが起こるのか? |
1.家督相続制度がなくなった
戦前の家督相続制度は廃止されました。つまり、「家」を相続することがなくなったのです。「財産」を相続するのです。従って、長男以外にも財産が分配されるのはいいのですが、相続人の数だけトラブルは多くなっているのです。
2.遺留分制度の存在
配偶者、子供、直系尊属は、「遺留分」を持ちます。最低限財産の分配を受けられるのです。このため、財産が不動産1か所であった場合、遺留分減殺請求によって、家を手放さざる得ない例が多くあります。もちろん相続税の問題もあるのですが、遺留分を支払うために今まで住んでいた家を手放すのは、本末転倒と言わざるを得ません。でも残念ながらこの遺留分を巡るトラブルは尽きません。
3.親族の分散
現在の日本では、サラリーマンの比率が極めて高くなっています。1990年代から、労働者全体の80%を超えるようになりました。このため、1か所に暮らす家族の割合が低下して、いわゆる核家族化が進みました。そして、被相続者は同居の家族に財産を分与したいという傾向があるため、法定相続分通りに分配されないケースが多いのです。 |
| ■法定相続分〜あなたの相続分は1/2?それとも1/4? |
では、相続人が法定相続分として受け取ることのできる割合はどうなっているのでしょうか。まず、法定相続人となりうる者は、次の通りです。
・配偶者(常に相続人となります)
・子(第1順位です)
・直系尊属(第2順位。父母、父母がいない場合は、祖父母)
・兄弟姉妹(第3順位です)
次に、実際の相続分を見ていきましょう。
(1)配偶者と子が相続人である場合
配偶者 1/2
子 1/2
(2)配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者 2/3
直系尊属 1/3
(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者 3/4
兄弟姉妹 1/4
以上をまとめると、下図のようになります。
配偶者は、他の相続人と共に、常に相続人となります。
| 法定相続分 |
| 法定相続人 |
配偶者 |
子 |
直系尊属 |
兄弟姉妹 |
| 配偶者と子 |
1/2 |
1/2 |
0 |
0 |
| 配偶者と直系尊属 |
2/3 |
0 |
1/3 |
0 |
| 配偶者と兄弟姉妹 |
3/4 |
0 |
0 |
1/4 |
| 子と直系尊属 |
0 |
全部 |
0 |
0 |
| 子と兄弟姉妹 |
0 |
全部 |
0 |
0 |
| 直系尊属と兄弟姉妹 |
0 |
0 |
全部 |
0 |
|
 |
|
| ■遺留分〜相続人としての権利 |
さて、問題の「遺留分」です。
兄弟姉妹には遺留分が認められていないことをご存じですか?
たとえ法定相続分が民法で定められていても、自分に相続させない遺言があれば、相続人となりません。遺留分の請求もできません。
遺留分は、相続人が直系尊属のみの場合、1/3。その他は1/2です。
といっても文章ではよくわからないので、図にしてみましょう。
| 遺留分 |
| 法定相続人 |
配偶者 |
子 |
直系尊属 |
兄弟姉妹 |
| 配偶者と子 |
1/4 |
1/4 |
0 |
0 |
| 配偶者と直系尊属 |
1/3 |
0 |
1/6 |
0 |
| 配偶者と兄弟姉妹 |
1/2 |
0 |
0 |
0 |
| 子のみ |
0 |
1/2 |
0 |
0 |
| 直系尊属のみ |
0 |
0 |
1/3 |
0 |
| 兄弟姉妹のみ |
0 |
0 |
0 |
0 |
※配偶者と子が3人の場合、配偶者の遺留分は1/4、子はそれぞれ1/12の遺留分を有します。 |
| ■寄与分〜家事労働は寄与分? |
寄与分とは、「共同相続人が、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をしたこと」です。どうですか?随分イメージと違うのではないでしょうか?もう一つ、重要なことで、「相続人でない者は認められない」のです。例えば、内縁の妻が、被相続人の事業に10年間にわたり貢献していても、寄与分を主張することはできないのです。それでは、具体的にはどのような問題が出てくるのでしょうか?
(1)奥さんの家事労働は認められない?
通常の家事については、寄与分の対象となりません。しかし、多数説では、これを超える特別の家事については「寄与分」を認めるとしています。判定基準は具体的になく、個別の事案に応じて裁判所が判断しています。例えば、療養看護や扶養の事実を加味した上で、家事が「特別」のものになっているかを判断するのです。
(2)夫婦で貯めてきたお金は?
10年以上共働きで、奥さんもマイホームを購入する際に1/4程度の貢献をしている場合です。一緒の財布で家計をやりくりしているケースがよくありますよね。奥さんがもらった給料をご主人名義の通帳に移している場合です。これも、昭和62年9月7日の判例より、奥さんの寄与分を認めるとしています。もちろん給与明細や通帳などの証拠書類は必要です。
(3)扶養
被相続人を扶養したことが寄与分の対象となるかどうか。
民法上は、「扶養は対価を期待して行うものではない」という前提に立ち、扶養自体では寄与分を認めていないが、生活費の援助など、金銭的な給付があった場合は、寄与分を認めている判例が多くあります。
(4)事業への資金提供、借金の返済
これは寄与分が認められます。
(5)労務の提供
被相続人の家業を長年手伝っていた場合、、報酬や生活費の負担者、他の相続人とのバランス等を考慮して、寄与分を認められるケースがあります。 |
| ■相続税〜いくら払えばいいの? |
みなさん心配な「相続税」。いったいいくら必要なのでしょうか?
以下の税率表でおおよその額を確認してみましょう!
| 相続税率 |
| 課税標準 |
税率 |
控除額 |
| 1000万円以下 |
10% |
− |
| 3000万円以下 |
15% |
50万円 |
| 5000万円以下 |
20% |
200万円 |
| 1億円以下 |
30% |
700万円 |
| 3億円以下 |
40% |
1700万円 |
| 3億円超 |
50% |
4700万円 |
実は最高税率は50%に引き下げられました。従来は70%だったのです!
ここで問題!
Q:「相続財産が1億円であれば、1億円×30%−700万円で2,300万円相続税となるのですか?」
(配偶者と子供3人が相続します。債務はなく、葬式費用もゼロとします。)
A:違います。実際は、課税相続資産の計算を次の通り行います。
計算1
【相続・遺贈により取得した財産】
+【みなし相続等により取得した財産】
+【被相続人からの3年以内の贈与】
−【非課税財産の価額】
−【債務の額】
−【葬式費用】
=各人の課税価格(千円未満切り捨て) |
計算2
【各人の課税価格の和】
−【基礎控除額(5千万円+1,000万円×法定相続人の数)】
=課税遺産総額 |
計算3
【課税遺産総額】×各人の法定相続分=法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額
(千円未満切り捨て)
【法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額】×税率=算出金額 |
計算4
3で算出した各法定相続人の算出税額を合計します。
相続税の総額×課税価格÷課税価格の合計額=各相続人の税額 |
これで終了!
先ほどの設例の場合、相続財産が1億円で配偶者と子供3人が相続人でした。
(計算式)
1億円−(5千万円+1千万円×4)=1千万円(=課税遺産総額)
1千万円×1/2=500万円 500万円×10%=500,000円(配偶者)
1千万円×1/6=1,666千円 1,666千円×10%=166,600円(子1人あたり)
したがって、(500,000円+166,600×3)=999,800円
配偶者税額軽減より、499,900円
これを相続割合に従って按分することになります。随分少ないという感じがしませんか? |
| ■遺言を書くときの注意点は? |
書いてみる前に、注意点をいくつか挙げておきます。書いてから実は無効であったなんてことがないように気をつけて下さいね。
○日付が入っていますか?
日付の入っていない遺言は無効です。平成15年3月吉日というのも、無効です。
○単独で書いていますか?
奥さんと連名で書いたら無効ですよ。気持ちはわかりますが...
○間違えてしまったので、修正したい
修正部分を明確にして、後から書けば構いません。抵触する部分につき後の
遺言書が有効です。全面的に修正するときは、「何年何月何日付の自筆証書
遺言はこれを無効とする」などと明確にするのがよいでしょう。
○ワープロで作ってプリントアウトしたものに署名押印した。
無効です。ご注意下さい。 |
| ■なぜ遺言を書くのですか? |
これは、二つ意味があると思います。一つは、「自分の遺志」のため。思うように自分の財産を分け与えるため。もう一つは、身内の財産争いを避けるため。前者は積極的な要因、後者は消極的な要因と言えるでしょう。それでは、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
(1)争いの絶えない兄弟姉妹に相続分を与えない
法定相続人が配偶者と兄弟姉妹だけのとき、兄弟姉妹の法定相続分は1/4です。ところが、遺言で配偶者に全部の財産を与えると書けば、それは有効になります。あれっ?それって認められないのでは、と思った方、きっと「遺留分」のことですね。兄弟姉妹には「遺留分」が認められないのです。従って、法定相続分を侵す遺言も、この場合は有効になるのです。
(2)愛人の子を認知したい
これは遺言でなくても認知できます。遺言によっても有効となる法律行為の一つとして民法で定められています。認知をした場合、愛人の子も相続人となりますが、非嫡出子であるため、相続分は実子の1/2です。
(3)面倒を見てくれた次女に多く財産を配分したい
非常によくある話です。長男長女は遠くに行ってしまい、次女が残って親の世話を献身的に見ていた場合です。しかも財産は不動産しかなく、これを分割すれば次女の行き場がなくなってしまうようなケースです。通常の法定相続分通りに財産分割されるのを防ぎ、遺留分を侵さない範囲でなるべく次女の不動産持分を増やしてあげる方法です。実際にトラブルが発生してからでは遅いのです。
(4)特定の相続人が単独で登記申請できる
大きなメリットです。通常は相続人全員の遺産分割協議書等が必要になります。ところが「土地建物をAに相続させる」とした場合、Aが単独で相続登記できるのです。隔地間でのやりとりや、不仲な子達であった場合、このような遺言が助けとなることでしょう。 |